携帯への不審者情報配信のルールを明確に

不審者情報を子どもたちの保護者がもつ携帯へ配信するサービスが普及してきたようです。
例えば、大阪市教育委員会でも、昨年10月から子ども安全メールと称して、携帯への不審者情報サービスを開始し、その後2ヶ月間で130件のメール配信がされたそうです(大阪日日新聞より)。平均すれば1ヶ月に60件以上のメールになり、そのメール数の多さに驚きます。
このようなサービスは、既にスまっぷでも運用していますが、昨年9月からの運用以来これまでに5件程度ですので、それほど多くはありません。緊急を要する不審者情報は少ないほうがそれだけ地域の安全レベルが高いと評価できると思いますから、それ自体は問題ではないのかもしれません。
しかし、携帯メールによる不審者情報の提供についてはいくつかの課題があると考えています。
一つは、メールを受けた保護者が、それによってどのような行動をとるべきかを明確にすることが困難ということです。
おそらく、こんな事件が発生したので注意しましょうということになるのではないでしょうか。しかし、1ヶ月に60件以上のメールが届いたとしたら、次第に感覚が麻痺してくる心配があります。「またか」ということで、内容をよく読むことすらしなくなることも考えられます。
確かに、携帯メールを利用した伝達は、従来の電話等による方法に比べて格段にスピードアップされます。しかし、そのことが防犯につながらないのであれば意味がありません。
また、不審者情報の確かさというのも課題と考えます。
例えば、先の大阪の例では、「女子小学生が五十すぎの見知らぬ女に声を掛けられ、腕を無理に引っ張られた」「登校中の男子小学生が車に乗った男一人と女二人から『車に乗せていったろか』と声を掛けられた」というような内容が携帯に配信されているそうです。これらの例は確かに誘拐未遂というような悪質な内容ですので緊急連絡の必要性が高いと思われますが、不審者情報の定義を明確にしておかないと、単に道を尋ねるだけの行為についても不審者情報の扱いをされかねません。
アメリカでは、アンバーアラートという仕組みがあって、子どもが誘拐されると地元の放送局や高速道路の掲示板等に、その情報が流され誘拐犯から子どもを守る協力を呼びかけるそうです。
この場合、アンバーアラート発令の3つの必須条件というのがあって、
 ①警察サイドが、18歳未満の子供が誘拐された事実を確認すること
 ②誘拐された子供が、現在、危険な状態にあると考えられること
 ③以下の情報を公開することにより、子供の命を救えると考えられること
   ・誘拐された子供の、年齢、身体的な特徴、着衣
   ・誘拐犯の、年齢、身体的な特徴、着衣、仕事・関係などの情報
   ・誘拐に使われていると思われる車の車種、色、年式
この内容がそのまま日本に適用できるかどうかはわかりませんが、このくらい明確な情報発信の基準を明確にしておくことは必要と思います。