先週、つくば国際会議場で地理情報(GIS)フォーラムがあり、参加してきました。
フォーラムの中で、アメリカでは性犯罪を犯した者の居所や、その人が過去にどのような犯罪を犯したかなど、詳細な情報がインターネットの地図上で検索できる仕組みがあるという事例が紹介されていました。
場所はロスアンジェルスということでしたが、紹介された地図には殆どびっしりと犯罪者の居住場所がプロットされていて、こんなにも性犯罪者が多いのかと改めてアメリカの治安の悪さに驚きました。
それと同時に、ここまで詳細な情報が一般市民の誰もが見られるサイトで公開されていることにも驚きました。これは、メーガン法と呼ばれる法律に基づいて実施されているそうです。
地図画面を拡大すると、犯罪経歴をもつ者の家を特定できますし、さらにプロットされているポイントを選択すると、顔写真や詳細な個人情報が表示されるのです。
性犯罪者にたいする情報公開の方法は、州によっても大きく違うそうで、一概にアメリカでは・・・ということはできませんが、日本でも最近性犯罪者は再犯性が高いということで、奈良県の女児誘拐殺害事件を契機に、法務省は性犯罪者の処遇プログラムが検討され、先月にはその内容が公開されています。
プライバシー保護の問題や犯罪経歴をもつ者の社会復帰が困難になるなどの問題も考えられますが、それ以上に子どもの命を守ることが優先されるべきという判断なのでしょう。
難しい問題だと思います。
通学路の危険箇所情報を公開するためのルールについて
”スまっぷ”を地域で利用していただこうと、地域の防犯に関するボランティア活動しておられる方に働きかけてみました。
しかし、意外にも、危険箇所情報をインターネット上で誰でも見られるようにすることは、逆にそれを犯罪に利用される可能性もあるのではないかということで、利用については否定的な意見が返ってきました。
確かに、その可能性がないとは言い切れません。
いくつかの県では、既に、不審者情報をインターネット上で公開していますが、その情報が逆に犯罪に利用される可能性について、どのように判断しているのでしょうか。そのことについて、ネット上で調べてみましたが、明確な判断基準というようなものは見当たりませんでした。
”スまっぷ”では、特定の利用者の間でのみ情報を共有する機能を持っていますので、不特定多数に閲覧されることを防ぐことが可能ですし、また、地域の一般住民に対して情報を公開することも可能です。
ただ、その判断はシステム利用者に委ねています。
情報が公開され、地域で共有されたからといって、子どもたちの安全が守られるわけではありません。その情報を受けた人々が、どのように行動するかが問題なのです。
何も行動しないのであれば、情報は無くても同じことです。
情報公開は、情報を受けて行動することが前提なのです。
行動するために、その情報が必要かどうかが、判断基準になると思うのです。
子どもたちの安全を守るための行動を開始するとき、どこにどのような危険な状況があるかを知ることは必要不可欠なことではないでしょうか。
いずれにしても、何らかの合意できるルール作りが必要なようです。
子どもの安全 オーストラリアの場合
今回は、オーストラリアに住む日本人の主婦が書かれた記事です。
「・・・通学路で、子供達が道を横断しないといけない場所には、必ず「ロリーポップマン(キャンディーマン(?))」という、ボランティアの人達が、オレンジ色の目印と、白いユニフォームを着て、子供達の道の横断を見守ります。このロリーポップマン各学校が、出しているので、だいたい学校が始まる時間と、終わる時間には、どの横断歩道にもロリーポップマンがいます。そして、生徒達がその場所に来ると、オレンジ色の標識を持って、横断歩道の中央まで行き、「生徒がわたります」と記されたその標識を掲げ、車を止めるわけです。 」(引用)
この記事では、オーストラリアではボランティアが地域社会の中で、子どもたちの安全を守るための一定の役割を担っていることが分かります。
このボランティア「ロリーポップマン」は、各学校が出しているということですが、どのような人達によって構成されているのかはよく分かりません。
日本でも、最近は時間が割りに自由なお年寄りに、通学路の子どもたちのサポートをお願いしているという記事もよく目にするようになりました。これと似た制度なのでしょうか。
そう言えば、昔小学校の近くの横断歩道には、毎日かならず「みどりのおばさん」が立っていて、子どもたちと朝挨拶を交わす姿が思い出されました。
警察庁のまとめによると、現在の防犯ボランティア団体は全国に約1万4000あり、平成15年に比べて約4.6倍に増え、団体を構成する構成員別では、町内会・自治会員による団体が約半数(7,141団体、51.1%)を占めるほか、平成15年末現在に比べると、子どもの保護者による団体の把握が急増(1,969団体、18.4倍)しているということです。
防犯ボランティア情報は、防犯ボランティア支援サイトで見ることができます。
子どもの安全に関するイギリス事情の記事紹介
子どもの安全に関して、先進国と言われるアメリカやイギリスでは、どのような対応をしているのかなど、気になりましたので、ネットで記事を探して見ました。
イギリスに住む日本人主婦の記事:イギリスの子どもの危機管理の現状を見つけることができましたので、ご紹介します。
この記事を書かれた主婦は、イギリスのロンドンに住んでいらっしゃるとのことですが、ロンドンは日本ほど安全ではないということで、比較的治安がよいといわれる地域でも犯罪は日常的に起きているようです。
こどもの安全に関しては、基本的にその親に責任があるということで、「小学校3年生にあがるまで責任のある大人(通常14歳以上)が、 小学生の送り迎えをしなければいけない所です。朝も、晩も毎日です。朝は先生が校庭まで出てきて、申し送りをするまで、帰りは、先生が保護者が迎えに来ていること を、ひとりひとり確認して、やっと教室から出してもらえます。」(引用)ということです。
日本とイギリスの治安の状態がかなり違うようですので、日本に住む我々にとっては、毎日の送り迎えは大変だと思いますが、日本でも治安がさらに悪化すれば、イギリスと同じような対応を迫られるかもしれません。
そうならないようにするには、地域の連携はますます重要になると思いました。
子どもの安全に関する最近の新聞記事
Yahooで検索してみました。
○地図を使った不審者情報の公開
和歌山県警「子ども危険地図」(紀伊民報AGARAフラッシュニュース)
○メールで不審者情報
不審者情報:栃木県警がメール配信 全署から住民に(毎日新聞栃木ニュース)
携帯メールで犯罪情報速報=初の24時間態勢-23日スタート・大阪府警(時事通信)
不審者情報携帯で:岩手県警(岩手日報)
○ボランティア活動
防犯:「ハッピーパトロール隊」を編成--新座の自治会が「子供を守る会」 /埼玉(毎日新聞埼玉ニュース)
スクールバスが本当にベストな問題解決策?
アメリカでは、小学校の登下校にスクールバスを使うのはごく一般的なことなそうです。子供の通学路での安全を確保するためには、日本でもこのスクールバスを使うべきという意見が多いように思います。
>下校時の学童の安全はスクールバスを考慮すればいいのでは
でも、本当にスクールバスがベストな解決策なのでしょうか?
アメリカと日本では、通学事情も違います。学校までの距離がアメリカほど遠くないところで、スクールバスを運行するが本当に可能なのかどうか、その費用も大変だと思いますし、また、これまで、子供たちが、集団で登下校している通学路で、子供たちを見守る地域の人たちとの挨拶を交わしたり、田舎であれば、途中の田んぼのおたまじゃくしや昆虫などの発見もあったりして、それが子供が成長する上での重要な意味を持つこともあるかもしれません。そのような機会を奪ってしまうというようなマイナス面も考慮すべきではないでしょうか。
子供たちがスクールバスを使わなくても、安心して通学できる街づくりをどうしたら実現できるか、そこから考えるべきと思います。
子どもがつくった安全マップを地域で共有できないでしょうか
子どもたちが自ら通学路の安全マップを作成している事例が各地で報告されています。
子どもたちが安全マップづくりを通して、どこにどのような危険があるのかを自ら体験的に調べることで、安全に対する能動的な対応力が養成できることや、調べた結果を安全マップづくりを通してクラスの友達や、先生、親と情報共有することで、地域全体としての安全対策にも繋がるなどが期待されます。
実際に作成された安全マップで、子どもたちがみつけた危険箇所とは、どんなところなのでしょうか?
インターネットに公開されている子どもたちによる安全マップを探して見ましたが、なかなか見つかりませんでした。
暗いところ、見通しが悪いところなど、子どもたちが危険と感じる場所はいろいろとあると思いますが、大人の目線ではわからないところもあるかもしれません。
公開は難しいのでしょうか?
通学安全マップづくりを通して児童の危険予測・回避能力を身にづける
文科省は、平成17年12月6日各都道府県、教育委員会に「登下校時における幼児児童生徒の安全確保について」の通知文をHPで公開しています。
この中で次の5つの施策を挙げています
1通学路の安全点検の徹底と要注意箇所の周知徹底
2登下校時の幼児児童生徒の安全管理の徹底
3幼児児童生徒に危険予測・回避能力を身に付けさせるための安全教育の推進
4不審者等に関する情報の共有
5警察との連携
この中で、3については、幼児児童生徒に、犯罪に巻き込まれないようにするためには、様々な機会を通じて、危険予測能力や危険回避能力を身につけさせることが必要であるとし、そのためには通学安全マップの作成等を通じた指導が必要であるとしています。
また、通学安全マップの作成については、「児童生徒を参加させることにより、児童生徒が自ら実感を持って危険箇所を認識することが期待できる。その際、小学校低学年の児童だけでは困難な面もあるため、上級生とグループを組ませる、保護者や警察官と一緒に実際の通学路をまわるといった取組も有効であると考えられる。」と述べています。
埼玉県警の地図による~子どもを狙った不審者情報~
埼玉県警のホームページから~子どもを狙った不審者情報~が公開されています。
17年10~12月中に発生した小学生以下を対象とした事案の不審者情報です。
たった3ヶ月の間にもかかわらず、これだけ多くの不審者情報があり、しかも、その内容はこどもに声をかけて連れて行こうとするものも多く、本当に今の世の中どうなっているのと首を傾げたくなるばかりです。
このサイトは、地図を使って特に不審者情報が多い地域を赤く色分けしているので、一目でどこの地域が注意地域か直ぐ分かります。
また、携帯でも文字情報で同じ内容を確認することができるようになっていました。
この情報に基づいて地域がどのような活動をするか、そこが重要と思います。
これからも、このような視点で、情報を収集していきたいと思います。
奈良県でも、保護者の携帯にメールで不審者情報を配信
奈良県教育委員会では、平成17年2月より、不審者情報を保護者に携帯メールで配信しています。
http://www.nara-c.ed.jp/seishi/hushinsha-joho01.htm
上記のアドレスでその内容を見ることができます。
これを見ると、昨年12月の記事だけでも、30件以上、1日1件以上の不審者情報があるという状況です。
“スまっぷ”にも、携帯メールで不審者情報を含め、緊急性のある情報はメール配信することができます。
これまでに、この仕組みを利用して配信された情報は僅かですが、実際には不審者情報は報告されないだけで、もっとあるのかも知れません。
“スまっぷ”の普及を急ぎたいと考えております。
ご協力お願いいたします。