地域の安全低下は地域教育力の低下にも影響?

文部科学省による「地域の教育力に関する実態調査」報告(案)(2006.02.14)では、地域教育力について、保護者及びこどもに対して、アンケート調査を行っています。
この結果、子どもの保護者の過半数が、自分のこども時代と比べて地域の教育力が低下していると回答しています。
さらに、この原因についての質問に対し、
 1.個人主義が浸透してきているので・・・56.1%
 2.地域が安全でなくなり、子どもを他人と交流させることへの抵抗がある・・・33.7%
 3.近所の人々が親交を深められる機会が不足しているので・・・33.2%
 4.人々の居住地に対する親近感が希薄化しているので・・・33.1%
 5.母親の就労が増加しているので・・・30.1%
という結果が報告されています。
地域の安全低下が、地域の教育力も低下させていると感じている保護者が意外に多いということに驚きます。
これは、あくまでもアンケート調査ですから、このことだけで実際に地域の教育力と地域の安全が関係しているかは分かりませんが、地域コミュニティの関係が希薄になっていることだけは確かと思います。
また、地域の子どもたちに対して、地域の役割として何をすべきかという問いかけについては、
 ・社会のルールを教える
 ・自然環境を大切にする気持ちを教える
 ・人を思いやる気持ちを教える
ということが上位に入っています。
子どもたちに対する放課後や休みの日にどのように過ごしているかの質問には、家の中でテレビやゲームをして遊んでいるという回答が多いという結果です。
子どもが家の中にこもっていて、地域と接触することが少ない状況では、ここで挙げられている地域の役割を果たすことは、なかなか難しいのではないでしょうか。

不審者の声かけがどんなときに多いか

千葉県警のホームページに、「平成16年中に警察に寄せられた小学生以下を対象とした声かけ等の不審者情報113件の分析結果」が公開されていました。
この報告の主な内容を紹介いたします。
【声かけの多い時間帯】
 ・15時台が27.4%と最も多く発生しています。
 ・子ども達が下校(帰宅)する15〜18時までの間が、59.3%となっています。
【どんな場面で声をかけられるか】
 ・下校中の被害が54.0%と半数を占めています。
 ・登校中を含めた通学時帯の被害は69.9%となります。
 ・「遊び中」(15.0%)、帰宅途中(12.4%)が多くなっています。
【声をかけられる場所】
 ・路上が69.0%と約7割を占めています。
 ・マンション内、エレベーター内、自宅敷地内の自宅の直近は13.3%となります。
【声をかけられる時の人数】
 ・一人でいる時の被害が80.5%と約8割を占めています。
【曜日別】
 ・金曜日が22.1%と最も多く発生しています。
【声かけ等の手口】
 ・突然近づいてきて性的な行為を要求することが14.2%
 ・次いで、「○○はどこ?」など道案内を装って近づき誘い込む・・・10.6%
 ・「お菓子をあげるからおいで。」などと甘言を用いて誘い込む・・・10.6%
 ・警察官、医者あるいは卒業生等を装って近づく…6件(5.3%)
【難を逃れた手段】
 ・「その場から逃げ出した」が最も多くなっています。
 ・次いで、「断る」「抵抗する」「騒ぐ」「泣く」の順です。
これらの傾向は、千葉県の特殊な状況ではなく、他の地域でも共通することではないかと思いますので、参考にしてください。

不審者対策では解決できない滋賀の事件

今回の滋賀の事件は、報道にあるように母親の子育てにおいて精神的に追い詰められていたことが起因しているとすれば、これまで全国各地で進められている地域安マップをつくって、不審者情報を共有し、お互いに注意しあいましょうという対策では問題解決はできないという新たな課題を提示していると言えます。
こどもを守る側の親の方に問題があるとすれば、救いようが無いという気もしますが、意外に子育てノイローゼあるいはそれに近いような精神的ストレスを感じている親は多いのではないでしょうか。
つくば市では、このようなこどもの親同士が互いに抱える問題をお互いに相談しあって解決しましょうということで、母親クラブや子育てNPO(ままとーん)などの団体が活動しています。
やはり、このような地域の活動が、今回のような問題を引き起こさなくても済むような環境づくりという意味で、重要な役割を担っているといえるのではないでしょうか。
是非、このような団体が、地域の安全度を高めるという意味でも、より活発に活動されることを期待したいと思います。

子どもたちを守る地域力の指標

昨日17日、滋賀県の長浜市で、幼稚園児の母親が近所の同じ幼稚園に通う二人の子どもを一緒に車で送る途中殺害するという事件が起きました。
これでは、もはや子どもを守るどんな方法も無力ではないかと暗澹たる気持ちになってしまいます。
報道されていることによると、おそらく殺害した母親の精神的な問題であるということですが、以前にも似たような事件があったことを思い出します。
あらためて、子どもたちはいつもあらゆる危険性にさらされているということを思い知らされました。
社会の安心して暮らせる度合いを、もし数値化することができたとしたら、今の社会、その数値は確実に低下しているように思います。
安心して暮らせるような社会の評価指数は、その社会に住む人々の価値観と地域社会力によって表現されるのではないでしょうか。
価値観については、人々が多様性をどれだけ認められるか、あるいは受け入れられるかです。自分とは違う価値観を持つ人がいるときに、それを受け入れようとすることは、結果として他人を思いやる気持ちを持つことができると考えるからです。
もっと平たく言うと、他人の気持ちが分かるということが、安全な社会を構成するための必要条件だと思うのです。
地域社会力とは、地域の結束力と言ってもいいと思います。地域の安全は一人の力では無力に近く、地域全体の相互協力関係による力が不可欠と思います。
具体的に言うと、学校とPTA、保護者の関係、行政と学校、学校と地域企業、学校とボランティアなど、あらゆる関係が強くなることによって、犯罪を防止したり、危険を回避できる力になるということです。
実際には、これらの要素を数値化することは難しいと思いますが、子どもを守る基本的な考え方として、もう一度これらの関係を検証してみる必要があるのはないでしょうか。
そんなことを考えながら、滋賀県長浜市とはどんなところか、滋賀県の統計データなどを見てみました。
長浜市は、滋賀県の北部に位置し、経済的には農業人口の割合が高く、事件の起きた場所の航空写真を見ると比較的水田の面積が多く見られます。子どもたちにとっては、環境は良いように思います。
犯罪の発生状況については、滋賀県の市町村の中では平成17年度犯罪率が3位となっていて、周辺の市町村より犯罪率は高いようですが、その多くは車や自転車などの窃盗が占めています。
今回の事件に関するいくつかのBlog記事を見てみました。グループ登園についての記事がいくつかあり、園児の母親にグループ登園への協力を強制するようなことがなかったかのか気になるという記事がありました。
これらのことから、今回の事件と地域の安全度との関係を直接見出すことはできそうもありませんが、地域社会と安全という視点から今回の事件の原因追究は必要なことではないでしょうか。

子どもたちが作った安全マップを次にどう活かすか

通学路の安全を守る4つのステップs内閣府の「登下校時の安全確保等のための緊急対策」の効果でしょうか、インターネットでみると各地で小学校の子どもたちが地域安全マップを作成している例が多く発表されています。
子どもたちが、安全マップを自ら体験的に作成するプロセスを通じて、地域の安全について見る目を養う効果や、協力した地域の方々による情報共有効果もあったのではないかと思います。
この子どもたちが努力して作成したこれらの安全マップを、そのとき限りのものとするのは大変もったいないことだと思います。
次のステップとして、子どもたちの保護者をはじめ、地域の商店、母親クラブ、ボランティアなど、地域の多くの人々に共有され、それぞれの立場で子どもたちの安全に寄与できるようにすることが求められます。
この子どもたちの安全マップを活用する4つのステップについて考えてみました。
図に示しますように、まずステップ1として、子どもたちが実際に自分の通学路の危険箇所についてしらべ、紙をベースとした安全マップを作成します。
しかし、このままでは他の人がみても子どもたちの作った地図が地域のどの場所かを正確に特定できるとは限りません。
そこで、ステップ2として、インターネット上にある地域全体の正確な地図上に、子どもたちが調べた危険箇所を転記します。
これによって、どこにどのような危険箇所があるかを、地域全体で共有できるようになります。
ステップ3として、それぞれの地域活動グループにおいてその情報に基づいた地域の安全性について分析し、自分たちでできる対策を考えます。
ステップ4では、実際に安全活動をした結果を踏まえて、地域の安全がどのように向上したかを確認します。
このようなサイクルを繰り返すことで、地域の安全が守られるものと思います。

内閣府:登下校時の安全確保等のための緊急対策

内閣府の犯罪から子供を守るための対策に関する関係省庁連絡会議は、平成17年12月に登下校時の安全確保等のための緊急対策として次の6項目を発表しています。
○ 全通学路の緊急安全点検
○ 全ての学校における防犯教室の緊急開催
○ 全ての地域における情報共有体制の緊急立ち上げ
○ 学校安全ボランティアの充実
○ 路線バスを活用した通学時の安全確保
○ 国民に対する協力の呼びかけ
これらの具体策としては、「全ての小学校区において、平成18 年3 月までに、全学校区・全通学路の安全点検を行うよう要請し、点検の結果については、警察やボランティアのパトロールに直ちに反映させるほか、子どもが実感を持って危険箇所を認識することができるよう、全国の全ての小学校で通学安全マップを作成するなど子どもへの防犯教育への活用や地域における対策につなげることを要請する。」としています。
また、「平成18 年3 月までに、全ての地域において、不審者情報について、警察が中心となり、学校、教育委員会、保護者、児童、地域住民等と連携し、情報が潜在化することがないよう共有化のためのネットワークを構築する。」となっています。
現在全国でこのような取り組みが進んでいるものと思いますが、“スまっぷ”もこのような対策の一手段として利用していただけるよう協力していきたいと思います。

子どもにとって安心安全な通学路とは

学校を核とした住宅市街地整備の推進に関する報告書((財)国土技術研究センター平成15年3月)によると、子どもたちの通学路の安全な整備のあり方にとして、次のようにまとめています。
 ①子どもにとって安全・安心な通学路
  ア 交通事故や転倒事故等に遭う危険性や不安感の少ない通学路等
  イ 周囲からの見通しが確保された通学路等
  ウ 周囲に「人の目」が確保された通学路等
  エ 夜間には一定の照度が確保された通学路等
  オ 緊急時には避難する場所が確保された通学路等
 ②子どもにとって魅力的な「通楽路」
  ア 沿道に四季折々の花があり、小鳥がさえずり、
    心地よい風や星空が楽しめる通楽路
  イ ゴミが放置されず、違法駐車が少ない
  ウ 地域の歴史や文化を見い出し、美しいまち並みが続き、
    時にはイベントが行われ、地域の人たちと挨拶が交わせられる
 ③高齢者等が外出しやすい散歩道
  ・子どもだけでなく、高齢者や障害者にとっても安全・安心
  ・高齢者が休めるようなスペースの整備は、通学路等の通行量が増え、
   視線が確保されることにより、子どもの安全・安心につながる。
この中で特に関心を持ったのは、②と③の子どもや高齢者にとっても魅力的な通学路について触れている点です。子どもたちが通学路で犯罪被害にあわないか、交通事故にあわないかなど、びくびくしながら歩かなければならないとしたら、実に悲しいことですし、そのような環境で子どもたちが情緒豊かに育つのかどうか、不安を覚えます。
鳥が鳴き、花が咲き、通りの人々が楽しく対話しているそんな通学路、現実とは程遠いとも思われるそんな通学路をなんとか取り戻したい、そんな気持ちになります。
この報告書では、通学路等の整備に当たって、次の5つの基本方針に基づき、犯罪等に対して安全な整備のあり方を検討し、関連施設の計画、設計及び維持管理を実施するとしています。
 ア 車の接近を妨げる
  ・通学路に犯罪企図者の車が容易に接近しにくいように、
   歩車道の分離措置を講じる。
 イ 周囲からの見通しを確保する
  ・通学路等及び沿道敷地の樹木や囲障等は、
   周囲からの死角の原因にならないよう留意する。
  ・通学路等及び沿道敷地の屋外照明は、一定の照度が連続して確保。
 ウ 周囲からの視線を確保する
  ・通学路等に対する自然な視線が確保されるように、
   沿道に居室の窓や居住者管理の花壇等を配置する。
  ・公園、広場、学校施設、集会施設等の魅力を高めることにより、
   子どもや地域住民の利用機会を増やす。
 エ コミュニティ形成を促進する
  ・通学路等の沿道に、子どもたちや地域住民等が集える場所を確保。
  ・公園、広場、学校施設、集会施設等の魅力を高めることにより、
   子どもや地域住民等による適切な維持管理を促進する。
 オ 緊急時における避難・通報体制の確保
  ・通学路等の沿道に、子どもたちや地域住民等が緊急時に避難できる
   場所を確保する。(「子ども110番の家」等)
  ・地下通路、公衆便所等、周囲からの視線が確保できにくい場所には
   必要に応じて緊急時の通報装置等を設置する。
このような観点から、現状の子どもたちの通学路について、地域が協力して診断できないでしょうか。

“スまっぷ”と県警が提供する安全マップとの違い

昨日、小学校の先生が多く参加されている会合の席で“スまっぷ”の紹介をさせていただきました。
やはり、先生の皆さんは、近頃の子どもたちの安全を脅かす事件については大変心配をされ、今後の対応に苦慮されていらっしゃることが強く伝わってきました。
“スまっぷ”については、こんなしくみが自分たちの学校でも使えたなら、あんなに苦労しなくても済んだかもしれないと、これまで紙を使って安全マップを作成されてきたことのご苦労を語っていただきました。
そんな中で、最近は全国の多くの県警で、子どもたちの安全に関する不審者情報がインターネットの地図上に公開されていることについて、感想を求めました。
県警のインターネットの地図を利用した安全マップは、県全体の安全状況を把握するうえでは役に立つけれども、自分たちの学校の周辺についての情報は少なく、子どもたちの通学路の細かい危険箇所を把握するためには、“スまっぷ”のような地域の細かい状況を把握できる地図が必要という答えが返ってきました。
また、仮に“スまっぷ”を利用する場合の課題については、やはり運用体制が問題で、学校のPTAの活動が活発なところでは運用が可能と思うけれど、そうでないところでは担当の先生が中心とならざるを得ないため、先生の負担がさらに大きくなることが懸念されるということでした。
そのほかには、学校の授業で子どもたちが“スまっぷ”を利用することについて、学校によってはコンピュータを使いこなしているとは言えない状況のところも多く、また、子どもの家庭へのパソコン普及割合が低いなど、コンピュータを地域で広く利用する環境が整うまでには、まだ、相当の期間が必要と思いますという感想もありました。
大変有意義な情報交流ができました。

安全マップは学校と地域が協力して作成することが重要

最近、インターネットで公開されている安全マップが多く目に付くようになりました。
これらの安全マップは、主として県警が地域から情報提供を受けて作成している例が多いようです。実際に内容を見ると、子どもたちが日常的と言っていいほど、頻繁に危険にさらされている状況がよく分かります。
ただ、心配なのは、このような情報を子どもの保護者や地域の人達がどれだけ見ているかということです。
せっかく情報が公開されていても、それが地域の多くの人に見られなければ意味がありません。
文部科学省の「登下校時における幼児児童生徒の安全確保について」にも記されているように、安全マップは地域全体が連携協力して作ることが重要です。
安全マップ作るプロセスの中で、どこが危険かを互いに認識できるでしょうし、地域の連携も強くなるものと思います。
また、地域の状況は日々変化しているといえます。その意味で、安全マップも随時更新されなければなりません。
一度作成したら、それでお終いではなく、何回も見直し点検が必要でしょう。
随時更新されるマップの経歴を見ることによって、地域の安全度がどう変化しているかも分かるようになると思います。
是非、安全マップの作成は地域の連携で作成するようにしたいものです。

不審者情報の緊急メール

昨日、不審者情報の緊急メールが発信されました。
この内容は“スまっぷ”のトップページにも掲載されています。
不審者が現れてから殆ど直ぐに情報が携帯に発信されましたので、通常の連絡網による手段と合わせて、保護者への連絡時間の短縮効果はあったものと思います。
なにより、実際に子どもたちが被害に会わなかったことで、ほっとしました。
今回の不審者情報が、直ちに犯罪に結びつくような情報だったかどうかはなかなか確かめられないと思いますが、今回のようにその可能性のある情報が直ぐに地域の保護者に連絡されれば、仮にそれが犯罪に関係するものであった場合、犯罪を防ぐ効果は大きいと思います。
是非、“スまっぷ”が他の地域でも利用されることを期待します。
※トップページに掲載される期間は緊急メール発信から1週間です。