文部科学省は、平成18年度予算案として、「子どもの安全に関する情報の効果的な共有システムに関する調査研究 」をあげています。
これは、「IT(携帯電話やパソコン等)を活用し、不審者情報をはじめとする子どもの安全に関する情報を地域で効果的に共有するシステムに係る取組を推進するとともに、その実践事例を分析・整理した上で、広く関係者にフィードバック・周知することにより、各地域における情報共有システムの継続的な取組への努力と創意工夫を促す調査研究を実施する。」ということが目的となっています。
まさに、私たちが推進している”スまっぷ”は、その先進的な例ではないかと考えていますが、この計画の言葉にもある「不審者情報をはじめとする子どもの安全に関する情報を共有する」事の意味について、もう一度考えてみる必要があるのではないでしょうか。
その一つは、不審者情報とはどのような情報を指すのかということです。
地域安全マップづくりの指導者である立正大学の小宮先生も4月8日に国土地理院で行われた子どもの安全WSでも言われていましたが、不審者に気をつけるよう子どもたちを教育することが、ともすれば子どもたちに対して、大人を信用しないように指導する事になり、子どもたちに人間不信を教育する事になりかねないということです。
もう一つは、地域で情報を共有してのち、こども、親、学校、地域住民が、どのようなアクションをとるかということです。
子どもが犯罪に巻き込まれないようにする、あるいは、巻き込まれそうになっり巻き込まれたときときすばやく対応して子どもを救出する。そのために、共有された情報をもとに、地域の関係者はどのような対応をするのか、事前にそのことを検討し準備しておくことが重要と思います。
すばやい行動が子どもの命を守ることにつながります。そのためには、リアルタイムの情報が必要になってきます。その意味で携帯やパソコン等の情報技術(IT)は最大限活用すべきでしょう。しかし、これらはあくまでもツール、最後はやはり人の行動によるしかありません。
ITと人による子どもを守る仕組みが一体となってはじめて子どもが守られる。当たり前の事ですが、案外このことが忘れられてしまいがちであると思います。
最近は、GIS(地理情報システム)を使って不審者情報を発信している自治体も多くなりました。しかし、中には、これをみて次にどうするのか疑問に思うものもあります。行動の取れない安全マップでは意味がありません。
それは、利用者の立場によっても異なります。
行政が利用する場合は、たぶん、地域全体を大局的みて地域の安全性を判断し、次に打つべき対策を考えるでしょう。その場合、安全が低下しているのは地域のどのあたりか○○丁目のレベルで把握できればいいかもしれません。
しかし、同じマップで子どもたちが、通学路のどの場所に注意が必要かは分からないかも知れません。例えば、○○通りを曲がったところは暗くて人目につきにくいけど、その先にこども110番の家があるから、なにかあればそこに逃げ込めばいいというような判断ができるくらいの詳細な情報が必要になると思います。
”スまっぷ”では、今後もそのことをしっかり意識して利用の推進を図っていきたいと考えます。
子どもの居場所づくり
子どもの通学路には犯罪の起こりやすいと考えられるところがいくつもあって、そのことを子どもたち自身が自ら意識できるよう地域安全マップ作りがさかんに行われるようになってきました。
このことは、子どもの安全を守る意味で非常に重要なことですが、一方で危険な場所がいたるところにある中、こどもは一体どこで遊んだらいいのだろうか、居場所がなくなってきているのではないだろうか、そのことは地域との接触機会も少なくなり子どもの健全な成長にも影響を与える事にならないだろうかという心配も出てきます。
危険な場所とされる「入りやすくて、見えにくいところ」の一つに公園があります。
公園の中にこどもたちが楽しく遊べるようにとつくった小山も、みえにくい場所を作る結果となり、あの公園は危険な場所だから行かない方がいいということになってしまいます。
一人では遊ばないと言っても、二人なら安全ということではないし、親としてはこどもをそとで遊ばせることは心配の種です。
こんな背景を踏まえてでしょうか、文部科学省も「地域教育力再生プラン」として、こどもの居場所づくりを進めているようです。
具体的には、子ども居場所づくりとして「市町村レベルにコーディネーター等を配置し、親に対する参加の呼びかけや学校や関係機関・団体との連携協力による人材の確保・登録を行うほか,登録された人材を子どもの居場所へ配置する。」というような内容になっています。
私たちのつくば市では、この事に関してどんな活動がされているのでしょうか、よく分かりませんが、スまっぷでも子どもたちの遊び空間がどういう状況になっているのか、機会があれば取り上げてみたいと思います。
並木高校が昨年度調べた危険箇所データが公開されました
県立並木高等学校は、今月11日昨年度の通学路における危険箇所データを、”スまっぷ”を利用して公開しました。
公開されたデータは、交通事故の危険性のある場所、声かけなど犯罪の危険性のある場所の二種類です。
交通事故や犯罪は必ずしも同じ場所で起きるとは限りませんが、交通事故が起こりやすい場所、また、高校生をターゲットに声をかけてくる場所がどんなところか、犯罪に巻き込まれないようにするにはどんなところに注意すべきかなど、参考にできることは多いと思います。
是非、そんな意味で活用して欲しいと思います。
今回、並木高校では初めてスまっぷを利用していただきましたが、課題も出てきました。
並木高校は地域の小中学校に比べて通学路の範囲が広く、生徒はつくば市だけでなくとなりの土浦市、牛久市からも通ってきています。
しかし、スまっぷで登録できる範囲は、つくば市に限られていますので、登録できなかったデータもありました。
今後は土浦市や牛久市など、より広い範囲をスまっぷがサポートできるようにする必要があると考えます。
安全ワークショップのご報告
昨日、国土地理院で”安全ワークショップ”が開催され、私たちが進めているスまっぷについても、ご紹介する機会を得ました。
ワークショップは大変盛況で、会場の外にもあふれるほどの参加者で、改めて子どもたちの安全に関する地域の関心の高さを感じました。
私がワークショップの中で特に関心を持ったのは、講演された立正大学の小宮先生のお話でした。
小宮先生は、これまでにもいろいろなところで地域安全マップの作成の考え方について講演されていますが、子どもたちにとって危険な場所というのは、「入りやすく見えにくいところ」ということをおっしゃっています。
そのような意識で、実際に通学路を歩いて、そのような危険な場所を地域安全マップとしてまとめるという考え方が重要ということです。
なんとなく、当たり前のように聞こえますが、小宮先生のお話では、実際に作成されている地域安全マップには、不審者マップや犯罪マップなどのように、場所ではなく、人に注目して作成されているものも多く見られ、特に、不審者というのは、子どもたちにも地域の人を不審な目でみることを強要するようなもので、教育的な見地からも全く意味の無いものであるとのことです。
今私たちが進めている安全マップ”スまっぷ”も、そのような失敗をしているのではないか、もう一度見直したいと思います。
川崎市でのこどもの転落死事件
「川崎市の自宅マンションで、転落死した小学校三年生(9つ)が、殺害された可能性が強まり県警が二十九日夜、捜査本部を設置したことを受け、市教育委員会は三十日、学校事故対策委員会や市内の小学校長を集め臨時小学校長会を開くなど、子どもの安全対策に追われた。
・・・
市教委は各小学校長に通学路、登下校時に危険が予測できる場所の安全対策を求めるよう通知。さらに危機管理室、市民局、健康福祉局との四者連絡会議を開催。子どもの文化センターなど市内の子ども関連施設などで不審者がいた場合、情報を共有していくことを申し合わせた。
・・・
臨時校長会では、市教委が市内約百十校の校長らに、事件と今後の対策を報告。出席した校長からは「保護者らと連携が必要」「市内の全校で足並みをそろえてやっていきたい」などの意見が出されたという。」(3/31東京新聞)
このような子どもが犠牲になる事件が起こるたびに思うことですが、どうしてこんな事が起こるのだろう、何故だろうという疑問です。
それは、逆に言うと、まさかそんな事は起こるわけが無いと思うことの裏返しの感覚だと思います。
今の時代、何が起きてもおかしくないほど、安全が脅かされているのです。
ちなみに、被害に遭った子どもが通っていた中野島小学校の安全マップを探してみたところ、この小学校の危険度マップを探すことができました。
変な人に声をかけられた場所や、暗くて人目につかない道路などが地図上に記載されています。
これを見て気がついたことは、暗くて人目につかない道路が声をかけられた場所とは限らない。というより、むしろそうではないところで起きているようです。
(地図の色使いが、交通と犯罪の危険箇所が区別できなく、よく分からない)
こどもが、親や地域の人々の目から離れて見えなくなる場所といういわゆる死角は、もっとたくさんあるのだと思います。
親と子ども、先生と子どもが、地域の人々の協力を得ながら、もっと実際に子どもたちの通学路を歩いて、徹底的に死角になる場所を探し、その情報を地域全体で共有し、犯罪者を締め出すことが必要と思います。
「子どもの防犯チェックリスト」で、もう一度チェックしてみませんか
茨城県の安全なまちづくりガイドのHPより「こどもの防犯チェックリスト」がダウンロードできます。
お子さんと一緒に、ときどき、チェックしてみてはいかがでしょうか。
1.きんじょの人に元気にあいさつをしていますか
2.「こどもを守る110番の家」を知っていますか
3.おうちにかえったら、大きな声で「ただいま」といっていますか
4.だれとあそぶか どこであそぶか なん時にかえるか おうちの人に話してからでかけていますか
5.あぶないところであそんでいませんか
6.おうちの人と「地域安全マップ」をつくったことがありますか
7.かえりがおそくなった時は、明るい道をとおってかえっていますか
8.ガードレールの内側を歩いていますか
9.防犯ブザーやホイッスルをならしたことがありますか
10.そとで一人であそんでいませんか
ぜんぶ「はい」になるよう、がんばろう!
不審者情報をどう活用したらよいか
地域にとって、子どもの安全をどう確保するかが大きな問題となっている中、通学路の不審者情報を、県警や教育委員会などからインターネットを通じて公開する例が増えています。
子を守る親として、子どもの安全に関わる不審者情報がインターネットで得られることにより、地域のどのような場所に注意をしたらよいか、どんなことに対して注意をしたらよいかなどを判断できるようになると思います。
しかし、不審者情報が必ずしも犯罪には関係ない場合があったり、不審者が一度現れたからといって、同じ場所にいつも不審者が現れるわけではないなど、不審者情報を実際にどのように活用したらよいかは難しい問題です。
”スまっぷ”を利用している小学校では、年に一度、それまでに登録されてた不審者情報などをもとに、注意すべき場所についてマップに整理し、これを印刷して全校生徒に配布しています。
この不審者情報の分析・整理がとても大切なことだと思います。
”スまっぷ”では、現在、この分析結果についての情報公開機能をサポートしていませんが、今後、一定のサイクルで、蓄積された情報に基づいて注意が必要な場所を分析した結果についても、利用者の皆さんと相談しながら、インターネットで配信できるようにしていきたいと考えています。
是非、皆様のご協力をお願いいたします。
「地域安全マップ ワークショップ」が開催されます
4月8日(土)、国土地理院と日本国際地図学会との共催により、「地域安全マップ ワークショップ」が開催されます。
◇名 称 地域安全マップ ワークショップ
◇開催日時 平成18年4月8日(土)13:30~15:30
◇開催会場 国土地理院 地図と測量の科学館(つくば市北郷1番)
◇入 場 料 無料(事前登録が必要です)
◇主 催 等 主催:国土地理院、日本国際地図学会
後援:つくば市、つくば市教育委員会、茨城県学校長会、茨城県PTA連
(問い合わせ先)
国土地理院 〒305-0811 茨城県つくば市北郷1番
総務部 広報広聴室 室長 山本 国雄 電話029-864-4038(直通)
総務部 広報広聴室長補佐 福島 照子 電話029-864-6254 (直通)
このワークショップで、”スまっぷ”も安全マップの事例として紹介させていただく予定です。
是非、参加されることをお勧めいたします。
広島県のこどもの安全に関するアンケート調査結果より
広島県は今年1月に、こどもの安全に関するアンケート調査を実施しています。
今月この結果が公表されました。
この中より、主な内容をひろってみました。
調査対象者 229人
小学校長: 52人
PTA関係者:50人
地域活動者:127人
調査方法
全員に質問する共通項目
小学校長,PTA関係者,地域活動者への個別の項目により調査を実施
選択又は自由記述により無記名で回答を得た。
回答者数 180人
(問)あなたの地域の子どもの安全に関する環境は,前回のアンケート(昨年)
以降変わりましたか。
⇒よくなった:84.4%
(問)「良くなった」とお答えの方は,その理由をお答えください。
(複数回答可)
⇒防犯パトロール等地域で子どもを守る取り組みが始まった(79.6%)
学校や地域で、地域安全マップを作成する取り組みが始まった(50.7%)
子ども110番の家のステッカーを目にするようになった(50.0%)
不審者情報が迅速に提供されるようになった(30.3%)
(問)あなたの学校(地域)では既に「地域安全マップ」を作製していますか。
⇒小学校長 作製している(45.5%)
地域活動者 作製している(28.3%)
※作製していないと回答した人も今後作製したいとするひとは95%以上
(問)あなたの学校の児童に関わる不審者情報が通報された場合の
保護者等への連絡方法をお答えください。
⇒印刷物(97.7%)
電話(45.5%)
携帯メール(18.2%)
ホームページに掲載(13.6%)
(問)今後携帯メールによる連絡を実施してみたいと思いますか。
⇒思う(30.6%)
思わない(63.9%)
まとめ
昨年の事件があった当時に比べて、環境がよくなったと感じている人が80%以上 というのは、率直によかったと思います。
その原因として、地域の子どもたちを守る活動が始まったことや、安全マップの作製があげられています。
不審者情報の連絡方法については、やはり印刷物で行うというのが圧倒的で、意外に携帯メールは使いたいと思う人が30%程度で使いたくないとする人が多いのにびっくり。地域性があるかも知れないと思いました。
「普通の登下校取り戻したい」Web朝日新聞ニュースより
Web朝日新聞ニュース2006年03月01日
「普通の登下校取り戻したい」という記事を読みました。
栃木小1殺害から3カ月、事件後は、「子どもを1人にしない」を合言葉に、地域住民30人の通学路での見守りや、散歩をする人などの校区巡回が定着したということです。
しかし、保護者による登下校時の付き添いについては、そのために職場から早退を余儀なくされ、それが原因で仕事をあきらめるケースも出ており、保護者による登校時の付き添いはそろそろやめてもいい時期にきているのではという声も出ているそうです。
保護者にとって、登下校の付き添いはかなりの負担になっていることが伝わってきます。
また、記事では、「子どもたちは登下校の中で人間関係を学び、冒険心をくすぐることにも数多く出会っていたはずだ。その意味で、安全安心だけでなく、子どもたちだけの遊びや社会勉強の時間だった登下校を取り戻そうというそんな動きが芽生えている」ということですが、子どもの安全と教育とのトレードオフの関係がここにも見られるということなのでしょうか。
子どもの安全、子どもの教育、その両方を同時に解決できる対策を考える必要がありそうです。